1月 年明けはクリスマスの再利用から
元旦だけがお休み。そうして淡々と2日から普通に街が動き出すフィンランド。それでも実のところクリスマスの余韻が残っていて、6日まではクリスマスの飾りが街にも家の中にも鎮座している。ツリーの下にプレゼントはなく、子供や動物が走ったり騒いだりのはずみで枝のあちこちからポトポト落ちていく飾り。クリスマスツリーも寂しそうだ。クリスマスが終わるとこんなものか。でかいのに立場がない。
我が家の冷蔵庫にはジンジャークッキーの生地が寝かせてある。クリスマスを待つ心には最高の香りを演出してくれたけれど、今となってはとぼけた感じで、冷蔵庫を開けるたびに「どうする、これ」という気分だ。クリスマスにチョコやゼリー玉をあちこちから頂戴してしまい(このプレゼントはフィンランドの定番)、そっと包装紙を戻して誰かに押し付けたいほどに同じものばかり何箱もある。なんだか日本のお歳暮を巡るやりとりのようだ。
フィンランドには「ルーネベリのタルト」という焼き菓子がある。名前の由来は詩人ルーネベリ。フィンランド国歌の詩は彼によるもの。これ、実はクリスマスの残りもの再利用なのだ。クリスマスから食べ続け飽き飽きしているというのに、一向に終わりが見えないジンジャークッキー。それをルーネベリ夫人が楽しく食べられるようにと工夫してみたのだ。ケーキのような焼き菓子に仕上がり大評判になった。クリスマスに残されたモノたちの再利用…ツリーは薪となって家やサウナを暖めてくれる。雑誌では包装紙のかしこい再利用法などが紹介される。
ルーネベリのタルトは1月下旬からスーパーやパン屋さんに並ぶ。ルーネベリの日にいただくものなので、この時期にならないと売り出さない。さすがに店にあるものは飽きられたジンジャークッキーの再利用ではないけれども、この時期フィンランドに来ることがあれば是非お試しください。
住人が飾ったことすら忘れられていそうな存在。大丈夫だろうか。1月のサンタはツリーよりも寂しそうだ。
かわいいから飾っておきたい。でも食べてなんぼ。飽きてきたら別の焼き菓子に変身もできちゃうジンジャークッキー。
これからは日照時間が長くなっていくばかり。精神的にもほっとする頃。真上まではなかなか昇らない陽も、こうして何時間か空をきりりと輝かせてくれる。
森下圭子さん
Keiko Morishita-Hiltunenさん
ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。