6月 散歩日和、森日和
フィンランドの天気予報では「晴れ」とセットになっている言葉がある。それも一年を通して。ただの晴れじゃなくて、もっと強調させて…「外出」に格好のお天気かどうかを伝えるのだ。
冬の寒さと暗さの中で聞くこの言葉は青空から注ぎ込まれる陽の光のようにキラキラしている。「よし、明日は何はなくともとりあ えず散歩だ!」なんて思いながら前日の夜からリュックに入れておく食べ物のことなんかをあれこれ考えたりして。冬の日々にはなんともありがたいお言葉だったけれど、最近では天気予報のたびにこの言葉が登場している。そこまで言い続ける必要があるのか。しつこくはないか。いや、この言葉を聴きながら青空の眩しい毎日に感謝しろというのか。翌日の外出を勧められてしまうと、その次のまた次の日も外出日和と分かっていながらリュックに入れていくものを考えてしまっている。
やっと半袖で外を歩ける季節になった。蚊に悩まされるまでにはまだ少し時間があるから、森の中を薄着で散歩してもいい。少し前までは白樺の枝をちょっといただいて、皮をはいで樹液をチュウチュウするのが楽しかった。いろんな苔が覆うふかふかの地面にはブルーベリーのぷっくりした赤い花。たんぽぽの葉に始まり、瑞々しい野草の青さに手が伸びる。サラダにしたりスープにしたり。
ふと遊びに行った田舎の小さな町で森遊びがさらに楽しくなるものを見つけてしまった。英語ではハンドカーという。廃線になった線路の上を、かつて線路上の移動で利用されていた手漕ぎ車で森の中をすり抜けていくのだ。ジムにあるボートの動きそのまま、いや、それにキック力まで鍛えられるか。自然の中で、リサイクル活用しながら運動が楽しめてしまう。すっかり夢中である。気づけば嬉々として天気予報をチェックする毎日。天気予報は明日のことでなく、夏の日々を夢見る想像をぐんぐん膨らませてくれている。
いよいよ白夜。真夜中でも闇がこない。北へ行けば、真夜中に外で読書だってできちゃう明るさ。7月にもなれば、この湖もヨットやボートで賑やかになる。
焚き火コーヒー。夏はこれがうまい。人によって「正しいコーヒーのわかしかた」が違ったりするけど、ポイントは攪拌(かくはん)。コーヒーの粉がお湯の中をまんべんなく踊るようにする。
これがハンドカー。廃線の上をリサイクルな手漕ぎ車で森を駆け抜けていきます。廃線利用、廃物利用、おまけにいい運動にもなる。新しい森での遊び方。