12月 実用としてのフェルトの歴史
稀に見る寒い冬がやってくる…そんな予想が最初にでたのは猛暑が続く夏の終わりのことだった。暑い中で聞く冬のことは現実味がなく、またここ数年で雪のないクリスマスを迎えたのは1度や2度じゃなかったヘルシンキだ、イメージできなかった。
ところが、そんな冬が本当にやってきた。予想通り。ヘルシンキに雪は降り続け、あっという間に全国一の積雪量となった。除雪が間に合わないし、海は 凍ってしまい、氷の中で冬を越さざるを得ない絶望的なボートも見かける。急激に真冬を迎えてしまい、どこかしらぎこちない。-10℃でレギンスの足をさら け出してる軽装の人とか大丈夫だろうか。
さて、ヘルシンキでめったに見られることのない美しい冬景色に恵まれているのだ、こんな景色や自然は思う存分に楽しみたい。そのためには十分な防 寒。なかでも足元は一番しっかり防寒しろという。そのフィンランドに伝わる昔ながらの足元の防寒、それがフェルトなのだ。室内履きが人気のフェルト靴だけ れど、その歴史はブーツから始まっている。森仕事をする人たちの冬の作業靴だったのだ。タイツの上に靴下を2枚、さらに毛糸の靴下をはいてトレッキングシューズ…これまでそんな風にしのいできていたのだけれど、フェルトのブーツなら靴下1枚でいい。どめを刺すように毛糸やフェルトの靴下を履いてフェルト ブーツにすれば、無敵な気さえする。このまえフェルトのブーツ工場へ伺ったついでに衝動買いしてしまったのだけれど、もう大正解だ。毎日の散歩が、森歩きが楽しい。
森歩きの防寒のポイントはお尻がしっかり隠れる丈のあるダウンコート、ミトン(の方が温かい空気を溜めておけるのだ)、耳をしっかり覆える帽子、襟元から冷たい空気が入りこまないようぐるぐる巻きにするマフラー、そしてフェルトブーツ。外出の準備は大変だけれど面倒がらなければ、多くの発見や出会いが待っている。防寒だけじゃなくホットベリージュースなんて用意しておけば、体を心からぽかぽかにできる。日照時間は短いけれど、少しでも長くこの雪景色と冬の気候を楽しもうと思う。
(文章・写真 森下圭子)
雪原にたつ靄というのは初めての光景だった。
ラップランドでの日照時間は極端に短い。日照時間がゼロになる極夜を目前に控えて。これで午後3時半ごろ。
冬に照る太陽はじりじりと低いところにいて、昼でもこんな風に景色を赤く染める。