4月 鳥のさえずりと色いろの世界
フィンランドでは4月だって当然の顔をして雪が降る。朝起きて外を見てみたら、サンタクロースを探してしまいそうなほど雪が積っていることだってある。でも季節は春。陽はぐんと長くなり、北のほうなら夜の9時10時だって空がまだ明るい。そして春の雪は解けていくのも早い。目まぐるしくコロコロと変わる空模様と外の風景、春が来たとばかりに浮かれた気持ちに雪景色は戸惑うことも多いけれど、それでも雪がとけるたびに春らしさを増していく、その感じに心が躍る。
春が少し深まるたびに鳥の声の重なりが厚くなる。畑には白鳥がいて、北へ向かう旅の腹ごしらえをしているようだ。旅途中の鳥、帰ってきた鳥、いろんな歌声があちこちから聞こえてくる。日没が遅く夜が明るいと、鳥の歌声だって夜更かしを始めるようになる。友人と話しながら、改めて思った。ほんの数ヶ月前は朝起きてもまだまだ外は真っ暗だったんだ。そして1ヶ月もすれば、外は若葉の緑で満たされる。
フィンランドの人たちは自分たちの一年がはっきりとした四季で彩られているという。それは日本の四季とは違っているけれど、自分を囲う環境を見渡してみれば、四季折々でそれぞれの色がはっきり違う。どこもかしこも真っ白だった大地は雪がとけて土がのぞき、そこからは次第に草花が育つ。どこを見渡しても裸ん坊だった木々にも少しずつ芽が吹き、やがて木々の向こうなど見渡せないほどの葉っぱが茂る。
来る日も来る日も灰色の空の下でモノトーンの風景の中を歩き続けた冬の日々。太陽が出ることも貴重なのに日没は容赦なく早い。冬の晴れた日には必死で太陽を追っかけたものだ。そこを今歩いてみれば、土や岩、海の水と変化にとんだ色の世界。青空の日も多く、そこには色んな形の雲がゆっくりと流れていく。まだまだ寒い日も多いけれど、それでも目の前にする光景には、勢いよく育つ自然の息吹がムンムンしている。花粉症はつらいけれど、それでもつい散歩をしてまわりたくなるそんな毎日だ。
北の春はどんどん日が長くなっていく。21時過ぎ、日没直後の海の風景。
雪の下でひと冬眠っていたリンゴンベリー。ぐんと深さを増した深紅のベリーになっていた。
雪の白、そして空と海の青。白と青のコントラストが春の日差しの中で眩しく映える。