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11月 冬志度のタイミング
 

雪あられが降ったのは10月の中ごろ。今年も落ち葉かきの間もなく雪が積もるのかと思いきや、秋が舞い戻ってきた。昔ながらの方法で魚を使って長期天気予報をする人たちがいる。彼らは口を揃えて「この冬は2ヵ月半くらいだね」と言った。とある魚の背びれがどれだけ黒いかで占うのだ。ギザギザの山ひとつを1ヶ月とみなす。どの魚も2山半のところまでが真っ黒、というわけで、本格的な冬は2ヵ月半ということなのだそうだ。

雪の気配はなく雨ばかり。まだ手袋をせずに歩いている人も多い。ちなみに去年の同じ時期はどこもかしこも雪景色だった。今年は冬の近さが感じられないからか、まだクリスマスの買い物をする人も全体的に少ないのだそうだ。

秋気分でいすぎたのか、今になって小さな島の冬支度の案内がきた。夏は賑やかに人が行き来する人気の場所なのだけれど、冬は海が凍るのでぽつりと孤独な島になる。いつもは11月の初めまでに大掃除をし、小屋の中はあちこちに埃よけのシーツをかけ、そして冬を迎える。そんな冬支度を今年は11月も終わりになってやろうということになったのだ。

 

まだ雪は積もらず海も凍ってはいないけれど、晩秋の海は波が高い。北からの風がゴウゴウと吹きすさび、あっという間に体を芯まで冷やしてしまう。いつもならボートで40分もいけば着くというのに、風に合わせ波に合わせ、島に上陸できたのは1時間半後だった。冬はまだと思っていたけれど、やっぱりもう冬なんだと痛感した。

 

静まることのない風の中で、大掃除をし冬支度を整えて島を出る予定は断念し、もう一泊することになった。やっぱりこの時期の自然は厳しい。そう、もう冬なんだ。島から戻り、急にクリスマスが気になりはじめた。さて、冬支度を急がなくては。

日の出とともに波の高さが気になりだす。今日は島を出られるのかどうか。

気温6℃でこれくらいの波がたつ風の強い日は完全防寒でボートに乗り込む。

気持よさげに波紋を広げるこんな海も、真冬になると歩けるほどに凍てつくのだ。

森下圭子さん

Keiko Morishita-Hiltunenさん

 

ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。

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