6月 白夜の雪景色
毎年11月がやってくると思う。さて、いつドーンと落ち込むんだろうかとか。というか、だるいなと思うと11月になっていて、ああこれからどんどん沈みがちになるのかなんてことを考えてしまうのだ。日照時間が短かくなったと痛感するようになるのも11月。いまでは9時ごろまで暗くて、16時にはもう暗い。
不思議に思われるかもしれないけれど、11月のこの鬱々とした感じは、フィンランドにいればいるほど強くのしかかってくるのだ。そしてフィンランド の人たちも、この11月には手こずっている。11月も終盤にさしかかると、今月は太陽が出ている時間がいかに短かったかがニュースになるのだ。ただでさえ 日照時間が短いのに、曇りや雨の日が続くのだ。
そんな中でどう日々を楽しもうか、どうしたら日々が楽しめるか。みんなそれぞれ知恵を出し合って、なんとかこの一ヵ月を乗り越えようとする。例えば 少しずつクリスマスプレゼントを買いためていく。夏や秋に採った森の恵みをたっぷり使ったお料理をする。最近は男性の間でも流行の編み物もいい。気の早い人は、すでにクリスマスを思わせるクローヴやジンジャー、カルダモンやシナモンをたっぷりつかったケーキやクッキーを焼いたりする。
今年はこれらに「読書チャレンジ」というのが加わった。もともとはSNSで一人が提案し、そこに次々とみんなが賛同したもので、1万人近くの人が参加している。これは1日に30ページ読みましょうというもので、私も途中、忙しさや風邪にかまけて脱落しかけたけれども、日々の誰かしらの読書報告を読みながら、そうだそうだと読み続けている。読書チャレンジ以外で接点のない人たちの本の嗜好や読書の愉しみというのは、なんとも新鮮で楽しい。『疾走』というタイトルの本を読んでいる人が、分厚い本を持ちながらの読書は、胸の筋肉が鍛えられてなかなかいいなんて報告、ちょっと笑ってしまう。さあ、そろそろクリスマスの声を聞く頃。なんとかこの鬱々とした季節を乗り切れそうだ。
群島のなかには、小さくても寄り添い合うように家が建ち並び、通年で暮らしている人々が集まる島がある。
夏はゆっくりと、手間がかかる料理をするのも楽しい。ライ麦生地を薄くのばしミルク粥をのせて焼くカレリアパイ。
フィンランドには湿地が多い。こんなふうに湿地が広がる地域もあちこちにある。苔の絨毯の下は沼なのでゆっくり歩くことができないが、国立公園などでは渡り木が置いてあり、湿地を散策できるようになっている。
森下圭子さん
Keiko Morishita-Hiltunenさん
ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。