9月 秋の水辺
朝晩と日中の気温差の大きなこの時期、一日の始まりを靄(もや)に包まれて迎えることがよくある。靄はとくに畑や湖を覆うように漂っているのだ。今朝はそんな朝靄が晴れていく途中で、そこに虹ができ、湖の上にふわりと浮かんでいたと話してくれた友人がいた。
夜は夜でオーロラが湖に映る時期だ。オーロラというと冬のイメージがあるけれど、実は9月にもオーロラが見られる。ただ、夜の時間は冬に比べると短いので、オーロラを確認できる時間が限られてしまう。秋のオーロラは一面の銀世界、雪あかりの中で眺めるのとは少し違う。漆黒の闇に浮かぶ秋のオーロラ、個人的にはそれも大好きだ。
秋というと、まずは森の色が移ろう美しい紅葉のことが頭に浮かぶけれど、靄やオーロラをはじめ、実は水辺の楽しさもある。海や川、湖に集う鳥たち。夕暮れ時に聞こえてくる鳥たちの声は、そろそろ出発を告げあう渡り鳥たちの合唱だろうか。
夏が終わり、低い位置から照りつける太陽や漆黒の夜空に浮かぶ月の、それぞれの光が水面に浮かび、光の道をつくる。意味もなくもの哀しい気持ちがこみ上げてきたりするけれど、シンプルに美しいと思う。そして水に浮かぶ月や太陽をこうして見られるのも、水が凍るまでの時間だ。
少し急かすように、海をヨットが行き交い、湖ではボートを浮かべ、日がな一日釣りを楽しむ人たちも見かける。
雨の多かった夏のあいだ、はりきってきのこ狩りをしてしまったせいか、きのこを理由に秋の始まりを森で迎えるタイミングを逃してしまった気がする。リンゴンベリーも熟してきたし、そろそろ水辺から森へと場所を移そうかと思う。
一年の7ヶ月が氷で覆われるイナリ湖。水面にオーロラが映る、そんな光景を楽しめるのも今のうち。
紅葉とともに、地面もブルーベリーからリンゴンベリー(こけもも)で彩られるように。
森と湖、フィンランドらしい景色。