12月 手仕事のたのしみ
クリスマスが近づくと、地下鉄やバスで編み物をしている人たちが増えていく。バッグには、すぐに毛糸をとりだして編み物ができるように入っていて、5分でもという風に編み物をする姿は、なんとも微笑ましい。他にもカフェや、郵便局や病院の待合室での順番待ちなど、町のあちこちで見かける編み物のある日常の風景は、年末の慌しさの中でほっとさせてくれる。
フィンランドでは小学校で編み物があり、何年か前に若い男の子の間で編みもの男子が急増したこと、手軽にできる編みぐるみの登場などがあり、ここのところ幅広い層で編み物が親しまれている。ヘルシンキでは毛糸の専門店も増えた。毛糸屋や手芸屋さんでも編み物会を開いてくれるし、カフェ付きの手芸屋さんでは編み物好きが自由にやってきて、コーヒーやケーキをいただきながら編み物を楽しんでいたりする。
私じしん、友人たちと編み物に限らず、フィンランドの伝統的な手仕事に色々トライしている。そしてフィンランド人たちと一緒にやっていて、あることに気づいた。それは私が先生が教えてくれた通りにお手本に近いものを作り、まずは基本をしっかり覚えようと思っているのに対して、フィンランドの人たちはどんどん自己流をあみだして、気づけばお手本とはまったく違うものを完成させていることだ。
フィンランドの人たちは決していい加減なのではない。待ち合わせの時間は守るし、基本的に約束をきちんと守る人たちだ。だけど、ことモノ作りになると、びっくりするほど自由になる。初めての人がいきなりそれを?と思うようなことでも、自分でやってみたいと思ったら絶対作っちゃう、というような印象。おかげで私は上手に作りたいとは思うものの、変なプレッシャーがない。のびのびと好きにモノ作りしている人たちに囲まれていると、「とにかく楽しいことが一番!」と思うのだ。
フィンランドの伝統的な手仕事をいくつかトライした今年。このクリスマスは伝統の…ということで、ツリーも森へ行き、自分たちで伐採するところからやることにした。自分たちらしい、楽しいクリスマスになりそうだ。
メリークリスマス!そしてよいお年をお迎えください。
この時期はマジパン菓子もクリスマス仕様。
たまの晴れは誰にとっても嬉しい。犬だってときおり冷たい海の水を浴びにいくほど大喜び。
日没後のすこしの時間、空気が青く染まる時間がある。フィンランドの人たちが大切にしているひととき。
森下圭子さん
Keiko Morishita-Hiltunenさん
ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。今はムーミン研究家として、またフィンランドの芸術活動や、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活躍中。